· 

火水未済 かすいびせい

64卦の最後の卦

●暁光海に浮かぶの象

ぎょうこううみにうかぶ

暁光海に浮かぶとは夜明け方、東方海上遥かに茜色に染まるをいう。

 

上卦(じょうか)の離を暁光とし、下卦(げか)の坎を海とする。

 

序卦伝(孔子が書いたと言われてきた十篇「十翼」の解説の1つで64卦がなぜ今の順番に並んでいるかという説明が書かれたもの)に『物窮まるべからざるなり 故に之を受けるに未済を以て終わる』とあるが、前卦の既済は物の窮まって変ずることないのならば、何事も行止まるであるが、世の中はそうではなくて陰極まれば陽生じ、陽極まれば陰生ず、冬来るなれば春遠からじ(遠くはない)で宇宙間の事凡て(ことすべて)変易して窮まることなきを説いたのが易理(えきり)である。それ故に既済の後に之を受くるに未済を以て終わっているのであって、この未済となると一旦窮まったものが再びその陽光を見得られることになるので、これ暁光海に浮かぶである。

 

 

●花落ち実を結ぶの意

はなおちみをむすぶ

前卦の既済は物の窮まり即ち行き止まりであるから、明から暗に入る意があるけれど此の未済はその反対で暗を出でて明に入るから一端その窮極に入ったものも漸次暁光をみることができる。即ち満開の花はその枝を辞して泥土に委してもその跡に実を結ぶことは、一端窮まったものが再び通ずることであって、象伝に『未済は享(う)ける』とある意を花落ちて実を結ぶと云ったのである。