沢の卦

沢の卦 · 18日 5月 2022
 此の卦の下卦の震に馬の象があり、上卦の兌に鹿の象がある。即ち上卦兌の鹿の逃げるのを下卦震の馬がこれを追う象とみて、馬に乗って鹿を追うといったのである。その真意は、或一事にひたむきに没頭し目的の物をのみ追い求めんとして、反ってぬきさしならぬ深淵に陥る如き結果になることを戒めたのである。
沢の卦 · 12日 5月 2022
 卦名の大過は大いに過ぎる又大いに過(あやま)ってである。初爻上爻の二陰爻が外にあって二、三、四、五爻の四陰爻が内にある。これが此の卦の爻象であるが、その内とは主人であって、外とは客人であるし、又陽は強くして陰は弱い。即ち主人たる陽が客人たる陰の柔弱より大いに強すぎる象故、此の卦を大過と名付けたのである。...
沢の卦 · 10日 5月 2022
卦名の咸は感であって、即ち感動することである。こと語句は説卦伝に『天地位を定め、山沢気を通ず』とあるのを假借(かしゃく:音はあるが当てるべき漢字のない語に対して、同音の既成の漢字を意味に関係なく転用するもの)したのである。兌の沢気は上昇し艮の山気は下降してここに山沢気を通ずである。これは地天泰の卦に於いて地気は上昇し天気は下降して陰陽相和するを示すのと同意義である。此の卦は易経下経の初めであって、男女交合夫婦人倫の道を示したものであって、兌の少女と艮の少男相感ずるを示したのである。艮の少男が兌の少女の下にいるのが此の卦であるが、これは男が女に下る象故一寸不純であり常道ではないように見えるけれど、然し決してそうではないのであって、これは艮の少男は内より唱えて兌の少女外より和する象である。彖伝(たんでん)に『二気漢應して以て相與(よ)す 止まって而(しか)して説(よろこ)ぶ 男女に下る 是を以て享(う)ける 貞に利し 女を取るに吉なり』とあるが婚姻の場合、凡(すべ)て男子側は下手に出て辞を卑しく禮(れい:礼)を厚くして新婦を迎えるのが常例であるし、又天地自然の理でもある。これ即ち此の卦に於いて兌の少女上におり、少男下に居る所以(ゆえん)である。 ※説卦伝:せっかでん。「易経」の解説として孔子が書いたとされる十翼の一つ。
沢の卦 · 01日 5月 2022
 蛟龍とはミヅチといって龍の一種で江河などに潜み蛇に似て四足あり。その大なるものは数丈もあってその卵は一二石(じゅうにごく:「石」は大きさを表す単位)のカメほどもあって、よく人を呑むという。兌を水潤の地とし、乾に龍の象がある。兌の下にある乾故、蛟龍といったのである。此の夬の卦は、元々地雷復から地沢臨となり地天泰となり雷天大壮となり澤天夬となったのであって、すなわち、陽爻の漸伸するのを喩えて天に登るといったのである。
沢の卦 · 29日 4月 2022
 卦名の萃はアツマルと訓ずる。上卦の兌を澤とし水潤の地とし下卦の坤に衆多(しゅうた:多いこと)の意あり、澤地下水の集まり合うところは水潤濕厚であるから、草木繁茂し魚類集まり棲息す。それに依って萃と名付けたのである。又此の卦には鯉の畵象(がしょう)がある。それは上爻の一陰は鯉の口で五爻四爻の二陽は鰓(えら)を張った象、そして三爻・二爻・初爻の三陰はその鱗の多いところと尚尾の象がある。  龍門というのは、支那の地名である。又の名を河津(かしん)という。その昔、禹(う)洪水を治めた折に開掘した處である。支那の古書に鯉が穴を出でて三月河を上り龍門を渡るのであるが、その際、無事龍門を渡ることができたものが龍となり、渡り得なかったものは額を㸃(てん)じて還るとあって、これが故事となって支那では科挙に及第して出世することを登竜門といい、科挙に落第することを㸃額と称するのであって此の卦の第五爻の中正の賢君と四爻の賢徳ある大臣とに万民皆悦んで順(したが)い集まり楽しむところから卦名を萃といい鯉龍門に登るの語をかけたのである。 禹:中国古代の伝説的な帝で、夏朝(かちょう)の創始者
沢の卦 · 28日 4月 2022
 卦名の困はクルシムと訓じ、口の中に木あるはその枝を伸ばすことができず苦しむ会意文字である。上卦の兌は口で、又鳴く象があり下卦の坎に飛鳥の象があり、又黒色枯木などの象もある。『物言えば唇寒し秋の風』で人間誰でも大変困窮している際に、弱みをみせまいと虚勢を張って言葉を飾り口舌(こうぜつ:口先だけの言葉)を以てその困苦を以てその困苦を脱しようとすれば一層困窮を増すことになるのであるが、それを鴉枯木になくの語をを以て表現したのである。秋は唯でさえ寂しきものを寒鴉(かんあ:冬のからす)が枯木にとまりカアカア鳴いてはいよいよ物の哀れを増すのである。『枯枝に烏とまりけり秋の暮』の句の中に此の卦の意と語句の意が含まれてある。 会意文字:二字以上の漢字の字形・意味を合わせて作られた漢字
沢の卦 · 27日 4月 2022
 卦名の革はアラタムで、上卦兌の金が下卦離の火のために焼かれてその形を変ずるところより革と名付けたのである。『腐草化して蛍となる』の語は旧六月大暑の月令から引用したのであって、此の卦の上爻は蛍の触覚で五・四・三爻の陽爻は、その胴体であり下卦の離は蛍の尻の光と見たのである。
沢の卦 · 20日 4月 2022
これは重兌の卦である。兌を少女とし悦ぶとする。又、上弦の月とし水潤の地とするから、上弦の兌を新月とみ、下卦の兌を池とみたのである。そして兌は正秋八月の卦であるから秋空高く澄み渡り、上弦の月が庭先の池に影を浮かべた様は、誠に風情あるものであるとの意である。