火の卦

火の卦 · 20日 5月 2022
離の太陽を上にし、乾の天が下にある。太陽中天に昇れる象であり、此の大有は太陽中天に輝く象である。彖伝に『柔尊位を得 大中にして而して上下之に應するを大有という』とあるが、之によって大有と名付けたのである。即ち第五爻一陰が君位に在って他の五陽之に隨(したが)う象で、これ有(たも)つことの大いなる故である。此の卦の六爻全体を以て壁の象とし、離を窓とし明とする。そして、此の卦は日が天上に在って照り亘(わた)る義であって、即ち明君(めいくん:賢明な君主)仁政(じんせい:恵み深く、思いやりのある政治)を施しておおいに亨(とお)るの時である。然し乍(なが)ら、第五爻の君不正に居って(第五爻陰爻故)自らを卑しくして賢人に下り政を行わしむる意があるので、折角の君徳も天下に及ぶこと狭く、それは恰(あたか)も窓から明の漏れるに似ている故に、窓を穿って明を開くといったのである。猶(なお)、重ねていうならば、此の卦五爻の一陰が君位に居るが陰柔(いんじゅう:うわべは柔順で、内心は邪悪であること)で、他の五つの陽爻は皆剛健(ごうけん:心身が強くたくましいこと)である。即ち君位は陽徳なく陰柔で剛健な臣下のためにやっと安きを得る象であるから、上卦の離も充分にその明を発揮することを得ず。そして五爻の一陰が高い處(ところ)に在って離卦の主爻となり、他は皆陽爻であるので恰も高い處に窓を開けた象とみたのである。
火の卦 · 16日 5月 2022
 山雷頤の卦の中に第四爻に一陽あり、恰も物を口中に入れて噛み砕く象である。元来、山雷頤の卦は口を開いた象である。即ち上卦の艮を上顎とし下卦の震を下顎とする。上顎は止まって動かず=艮の象、下顎は動いて物を食す=震の象、依って頤は口の象となる。又上下の二陽爻は唇であって、中爻の四陰は歯である。然るに噬嗑は、その山雷頤の中に一陽爻あって、これ頤中に物のある象で、又噬嗑はカミアワズと訓ずる。又彖伝(たんでん)に『頤中物有るは噬嗑いう』とあるので、その語を引用して頤中に物有るの象という語句をかけたのである。
火の卦 · 11日 5月 2022
 これは重離の卦である。離に火の形がある。火気は無形のものであって、その火気が他の物に着いて始めて火となってその形を示すのである。それであるから此の離卦には麗(つ)くと離れるとの両(ふた)つの義があるのである。即ち火気は宇宙に存在するけれど、マッチなり金石なりで発火作用をなして又物と物との摩擦によって火の形を現すのであって、その火気を薪とかその他の燃料に移し燃やすのである。これ即ち物に麗(つ)いて始めて火の形とか火の力を知ることができる。然し、その燃料が盡(つ)きると火力は自ら消滅する。これ即ち離れるである。これで離卦に麗(つ)くと離れるの両義のある意味が会得されるであろう。然し占断上では多くの場合、離れるの意を探るのである。又離に雉の象があり、なお網の象がある。下卦の離を雉とし上卦の離を網に象どる。依って網の中に雉の麗(つ)いた象とみて冒頭の語句をかけたのである。
火の卦 · 09日 5月 2022
 卦名の晋は進むであって元々地火明夷から来た卦である。明夷のときは離の日、坤の地下にある象であるが、晋は離の日、坤の地上に出て太陽の光輝、普(あまね)く地上を照らす象である。太陽が東天に昇り八方を照らすときは夜露(よつゆ)に濡れた草木のすべては、その光輝に映じて恰(あたか)も錦の繍を地上に布(し)いた如くであると晋卦の意を形容した語句である。
火の卦 · 04日 5月 2022
 此の卦は兌を下にし離を上にする。離の火は炎上し兌の水は下降する。これは上下相背くから睽と名付けた。離は赤色で人倫では中女である。兌は白色で人倫では少女である。中女といい少女といい共に年若い女であるからそれを花に喩えて離の中女を桃の花、兌の少女を李(スモモ)の花になぞらえて二女同居して親しくゆかないところから美を競うの語をかけたのである。
火の卦 · 26日 4月 2022
鼎はカナエで物を煮炊きする器である。そして物の改まる意がある。鼎の形は三足両耳をそろえ五味を調和する宝器なりといい、鼐とはその鼎の大きなものをいう。此の卦は鼎の画象である初爻を足とし二爻三爻四爻は胴で五爻を耳とし上爻を鉉(げん:器物につけてある弓型の取っ手)とする。下卦の巽木を上卦の離火炎上して煮炊きする象である。鼎は物を煮る器具であるから、硬きを軟らげ生臭きをよく熟して食用に供せしめる。その調味料として塩水火の3つがそれぞれその度に適しなければ旨くはならない。もしその1つが適度でないならば、その味はまずくて口にすることが出来憎い。これは鼎の三足のその1つを欠くとひっくりかえって用を為さぬのと同一である。それで鼎鼐調味の語をかけたのである。
火の卦 · 20日 4月 2022
 下卦の艮は山であり上卦の離は太陽である。互体の兌(三・四・五爻)を西とする。これ即ち日西山に傾く象である。又艮を家とし離をハナレルとする故これは家を出でて旅する意である。此の旅は憂きものとするのである。
火の卦 · 13日 4月 2022
64卦の最後の卦