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火風鼎 かふうてい

●鼎鼐調味の象

ていだいちょうみ

鼎はカナエで物を煮炊きする器である。そして物の改まる意がある。鼎の形は三足両耳をそろえ五味を調和する宝器なりといい、鼐とはその鼎の大きなものをいう。此の卦は鼎の画象である初爻を足とし二爻三爻四爻は胴で五爻を耳とし上爻を鉉(げん:器物につけてある弓型の取っ手)とする。下卦の巽木を上卦の離火炎上して煮炊きする象である。鼎は物を煮る器具であるから、硬きを軟らげ生臭きをよく熟して食用に供せしめる。その調味料として塩水火の3つがそれぞれその度に適しなければ旨くはならない。もしその1つが適度でないならば、その味はまずくて口にすることが出来憎い。これは鼎の三足のその1つを欠くとひっくりかえって用を為さぬのと同一である。それで鼎鼐調味の語をかけたのである。

●微服宋を過ぎるの意

びふくそうをすぎる

これは孔子の故事を引用した語である。孔子が諸国を巡遊した際、宋国の大夫(たいふ:貴族のこと)、司馬桓魋(しばかんたい)が孔子を殺そうと謀った。そこで孔子は難を避けるために衣服を賎(いや)しくして宋国を過ぎ身を全うしたのであるが、此の卦は堅きを柔らげ、醒きを熟し、旧きを捨て新しきに改め変ずる象で、それはあたかも孔子の故事を同じ意であるところより微服宋を過ぎるの語を引用してかけたのである。