水の卦

水の卦 · 25日 5月 2022
 此の卦は、震下坎上の卦であって上卦の坎は水の象、下卦の震は龍の象で尚震に動き進む象がある。依って龍水中に動くの象というのである。彖伝に「剛柔始めて交わり而(しか)して難生ず。険中に動く大いに亨(とお)る貞(ただ)し」とあるが、龍は昇天してこそ雲を起こし雨を呼ぶことも出来るが池中(ちちゅう)に在ってはその活動はなし得ない。今此の卦は、その龍が池中を出でて天上しようとする時であるが、その池中を出るということが大変な難みである。人は此の場合、慎重に行動せよというのである。
水の卦 · 25日 5月 2022
 下卦に乾天上卦に坎水がある。これは雨雲が空を重なり覆っているが雨となって降らない象である。此の蜜雲不雨という語は風天小畜の卦の彖辞であって小畜は、乾下巽上卦である。巽は坎の半分が欠けた象で即ち未だ坎とならないので雨降らずであるが、それが上爻に至ると既に雨降るのである(上爻辞-既に雨降り、既に處(お)る)が此の需卦は元来上卦に坎を配する。坎の雨水は降る可能性はあれど、下卦の乾の陽が之を保っているので、雨となって降ることができない―これ即ち蜜雲雨降らずである。雨は地上の万物に潤いを与えその成育を助けるのであるから、旱天(かんてん:ひでり)のときには人間を始め禽獣草木虫魚に至るまでひたすらに雨の降るのを需(ま)つ―夏の旱天の時の彼の雨を待つことを考えたなら、これ需つことの大いなるものであることがよく解るであろう。又彖伝には『需は須なり、険前に在るなり、剛健にして陥らず、其義困窮せず』とある。これは外卦の坎を大川とし、今、内卦、乾の剛健を以て妄(みだ)りに進み渉ろうとすれば、遂に陥り溺れる惧(おそ)れがあるから、暫く安全に渉れるまで時期を待つべきを示してある。郊に需(ま)つ、沙に需つ、泥に需つの爻辞がそれである。卦の配列即ち序卦では、乾坤の二卦で天地の開闢(かいびゃく:この世のはじまり)を示し、屯卦で國土創成を示し、蒙卦で人類の発生を示し、此の需卦で人類の飲食の道を示している。
水の卦 · 23日 5月 2022
 坤下坎上の卦である。坎水坤地の上を流れて隔てなきところから北と名付けたのである。即ち水地上を行くの象である。又彖伝に「比は輔くるなり。下順従するなり。」とあって、此の卦全体を観ると、五爻の一陽が君位に在って他の五陰に親しみ應じ、五陰も亦五爻の一陽に順従して之を輔(たす)ける故に比と名付けたのであるが、その象は丁度衆星が北極星に拱うという語句をかけたのである。それは上卦の坎は方位は北であり、その主爻である陽爻は五爻の君位に居る故に之を北極星に見立てたのである。支那古代の天文学によると、天体の北方に紫微垣(しびえん)という星座があって、その星座の中央を紫微宮と名付け其の處に天皇太帝(てんこうたいてい)という星が居て、此の星を中心として衆星が旋(めぐ)ると説明しているが、それは即ち北極星のことである。論語の為政編に曰う「北辰の其の所に居て衆星の之に拱ふが如し」とあるのが即ちこのことである。拱の字はムカウと訓じ手指をコマヌクこと(ある方向に向かう)で支那古代の貴人に対する時の礼儀の仕方である。
水の卦 · 11日 5月 2022
 重坎の卦である。坎は陥である一陽が二陰の間に陥る、陥れば険む、此の卦はその坎を重ねているのであって、その険みも亦大なりである。坎は人の横臥(おうが:体を横たえること)した形象であり、中爻の陽爻は人体で上下の二陰爻は手足とみる。又坎に水の象があり又陥る象があるから、上下全体で二人水に溺れて難(はば)むとみたのである。
水の卦 · 03日 5月 2022
 此の卦は『三難の卦』の1つである。卦名の蹇はアシナヘと訓じ、足の不具をいう。下卦の艮を門とし上卦の坎を陥穴とする。これ門前陥穴ある象で猥(みだ)りに進めばこれに陥る惧れがあり、退かんとすれば後方に艮の山が聳(そび)える。即ちこれは難卦である。故に彖伝に『西南に利しく東北に利しからず』というのである。此の場合、東北とは陽地で険阻(けんそ:地勢がけわしいさま)を意味し、西南は陰地で平坦を意味するのである。
水の卦 · 27日 4月 2022
 卦名の井は井戸である。それは人間生活上、缼(か)くべからざる飲料水を供給するところである。それ故、井字には養子の意があるのである。...
水の卦 · 17日 4月 2022
上卦の坎に狐の象があり下卦の兌は湿潤の地であるところから泥田とみたのである。即ち狐が泥田を渉る象である。元来狐の尾は、その身体の割に長くて毛がふさふさしているから老狐(ろうぎつね)が河を渉るときはその尾を濡らさないように高く上げて注意するが、子狐はそれだけ思慮がないから深浅も流れの緩急も考えずにみだりに進むから、その尾を濡らして進むのに困難する。河川ですらそのようであるから、それが泥田の場合なら一層困難であることは勿論である。この卦名の節はホドと訓じて、物事、その節度中庸(ちゅうよう)を得るをいうので及ばざるのもまた行き過ぎも嫌うのである。そこでこの卦は、坎の水か兌の澤の上にあって、溢れず少なからず、程よく止め貯えるをいうのである。
水の卦 · 15日 4月 2022
既済はツクル、トグルの意で既に済むである。此の卦は、六爻陰陽(ろっこういんよう)、相交わり相應じ(あいおうじ)、又は相比しそしてそれぞれ皆正位(しょうい)を得ておる。即ち交も應も比も位もすべて皆既に済む故に既済と名付けたのである。陰陽三才天人地相合し、事物が充熟して、あたかも果実が熟しきっている枝を離れ地中に埋もれて再び生ぜんとする如き卦である。 この芙蓉とは木の芙蓉であって、一見、木槿(むくげ)に似ている。花は紅と白との二種あって秋開く大変美しい花であるが、何分秋の花だけに霜に傷みやすい。彖辞(たんじ)に『初めは吉にして終わりは乱れる』とあるところから此の語句をつなげたのである。下卦(かか)の離を芙蓉とし上卦(じょうか)の坎を霜とする。 ※相合:物事を一緒にすること ※彖辞(たんじ):『易経』の各卦を説明した文章