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水山蹇 すいざんけん

●門前陥有るの象

もんぜんおとしあなある

 此の卦は『三難の卦』の1つである。卦名の蹇はアシナヘと訓じ、足の不具をいう。下卦の艮を門とし上卦の坎を陥穴とする。これ門前陥穴ある象で猥(みだ)りに進めばこれに陥る惧れがあり、退かんとすれば後方に艮の山が聳(そび)える。即ちこれは難卦である。故に彖伝に『西南に利しく東北に利しからず』というのである。此の場合、東北とは陽地で険阻(けんそ:地勢がけわしいさま)を意味し、西南は陰地で平坦を意味するのである。

●寒蝉風に悲しむの意

『涼風至る 白露降り寒蝉鳴く』これは立秋の月令であるが、蝉は夏のもので旧五月の半ば頃から鳴き始め、土用中がその最も得意時代といえよう。然るに、立秋となって秋風立ち始むるときは最早(もはや)昨日の勢いはなく鳴音(めいおん)もまことに悲しげである。そのように此の卦を得る際の気運は、あたかも寒蝉の秋風を悲しむ如くであるとの意である。