雷の卦

雷の卦 · 19日 5月 2022
 震上坤下の卦である。上卦は震雷、下卦は坤地である。此の卦は、元来、地雷復より来た卦であって、即ち地雷復のときは上卦坤地の下に下卦震雷があるから震雷は地中に在る象であるが、ここで雷地豫ととなると震雷地上に出でて震う象となる。そこで冒頭の語句をかけたのである。易では、此の震を春陽の気とみる場合が多い。そして方位は東に配するし、四季は春を配する。此の震の春陽の気は、乾天これを施し坤地これを受け百花草木はこれを資って繁茂し、禽獣虫魚(きんじゅうちゅうぎょ)はこれによって生々(いきいき)発育する。その春陽の気を乾天が施す状態は、これを見ることは出来ないけれど、地上の萬物が、春が来れば生育繁茂することによって、これを感知することは出来る。春陽の末、初雷の鳴る頃ともなれば百花は美を競い、新芽は緑濃くなり鳥は歌い、虫は穴より出て、地上の生きとし生けるもの皆生気に満ちて悦び楽しむ。此の自然現象から此の卦を豫と名付けたのである。
雷の卦 · 10日 5月 2022
卦名の恒はツネ又ヒサシと訓ずる同じツネと訓ずる常は事物の変わらないことをいい、此の恒は事物の変化して已(や)まず恒久なるをいう。一日には昼夜の変化があり、一年には春夏秋冬の変化がある。然し此の変化は千古(せんこ:太古から現在にいたるまでの間)恒久なのである。そこで彖伝(たんでん)に『天地の道は恒久にして已まず、往く攸(ゆう)あるに利し、終われば則ち始め有り、日月天を得てよく照らし四時(よつのとき:四季)変化してよく久しく成る。聖人その道に久しくして、天下成す』といって恒の真義を明らかにしたのである。又上卦の震は雷で下卦の巽は風である。そして震は東、巽は東南に配し、時候としては新の三、四、五月の候で、即ち雷声を発し始めて電すという季節で陽気発生して萬物之より暢(の)びんとする時期である。雷は陽気の動きである。風は陰気の動きである。(震は一陽下に動き巽は一陰下に入る)それで震雷の振い動くときは巽風起こって萬物をゆすぶる。これが即ち並び行くである。然し忽(たちま)ちにして風行は西し、雷鳴は東すれば、これ相背くである。此の卦を人事に当て嵌めていうならば震の長男と巽の長女が新家庭を作り、震の長男は外に振い動き巽の長女は内に斉(ととの)い順う。これ夫婦相和し家庭円満であるから即ち並び行くである。然し長い年月の間にはそう円満であるばかりにはゆかず、時には互いの意志に相反することが生じて、玆(ここ)に家庭争議が起こる。これ相反しである。そのような夫婦間の変化も男は外に振動し、女は内に巽順であれば、その道は恒久なることを得るのである。
雷の卦 · 09日 5月 2022
 乾を下とし震を上にする卦である。乾は剛であり震は動く故に此の卦を大壮と名付けた。消長からみれば、地雷復→地沢臨→地天泰→雷天大壮となったのであって、此の大壮は四陽の勢い猛(たけ)くして将(まさ)に五爻上爻の二陰に迫りやがて沢天夬となり遂に乾為天の純陽壮んな卦に至らんとするから大壮と名付けたのである。下卦の乾に猛虎の象があり上卦の震に角の象がある。これ猛虎角を生ずである。  元来獣類(じゅうるい)に角、牙、爪などのあるのは敵と闘うときの武器である。此の武器があって敵の侵害を防ぎ又他の鳥獣を倒すこともできるのであるが、天は二物を與(あた)えず牙あるものには角はなく、角あるものには鋭い爪はないのが普通である。虎の場合では、他の強敵と闘うに充分である鋭い爪を有っているのに、なお若(も)し角を生ずるならばその猛勢いよく激しくそのため反(かえ)ってその身を誤り進み過ぎて危うきに至らむというのである。
雷の卦 · 03日 5月 2022
 上卦の震の春陽の気が下卦の坎の冬氷を解く意から卦名を解と名付けた。坎を川とし震を足とし又渉るの象がある。互体に坎があってその互体の坎水は震の足に着いている。これは足の未だ乾かない象である。此の卦は水山蹇の卦の反対で、そして水雷屯の卦から来たのである。即ち、屯と蹇の難み(かたみ:困難)は解けたけれども、なお坎の険難から遠ざかってはいないから、これは川を渉ってその足の濡れたのが未だ乾かない如くである。誰でも屯蹇の難みを脱して一安心を得ると、遂気の緩みが出て怠りの心が生ずるのであるが、此の解の時期は未だ全く屯蹇の難みから遠ざかってしまったのではないのであるから、緊張を失わないように努めないと再び屯蹇の難みに戻ることにならうという意のなのである。
雷の卦 · 25日 4月 2022
これは重震の卦である。震に怒るの意あり又龍はよく怒るもの故、震に龍の象ありとし、なお震卦は一陽二陰の下に震い動く意ある故、龍の象とする。そして此の卦上下共に震であるから即ち二龍である。又震に宝玉の象があるから二龍玉を競うといったのである。その競うというのは上下の二雷相振動するというためである。
雷の卦 · 24日 4月 2022
 上卦震を長男として下卦兌を少女とする。これ少女が長男を追い求め、なお長男に随(したが)うを悦ぶ象である。風山漸も此の卦も共に婚姻の卦であるが、漸卦は順縁の卦であるから『女とつぐに吉 貞(ただ)しきによし』といい、此の帰妹卦は逆縁の卦故『往(い)けば凶なり、利するところなし』とある。即ち少女の身で長男を追い求める故に、これ逆縁というのである。
雷の卦 · 22日 4月 2022
 俊はトシ(敏)と訓じ、千人に秀(ひい)づるものをいう。隼はハヤブサで鷹の一種でその形は小さいが性非常に猛(たけ)くそして甚だ敏捷(びんしょう・すばしこいこと)である。此の卦の上卦震に隼俊の象があり下卦の離に雉の象がある。鷹狩の際、鷹匠が飛ぶ鳥を見かけて手に乗せる隼を放つと隼はその獲物を捕らえ得れば、その獲物と一緒に地上に降りてくるが、若(も)し獲物を逃がすときは鷹匠の元へは戻って来ず他へ逃げ去ってしまう習性があるので、占断上、此の卦を得る人、自分の勢いに任せて進み過ぎるときは恰も隼が獲物を逃して鷹匠の手元に戻り難きと同じ運命に陥ることがあるとの意を含めた語句である。
雷の卦 · 15日 4月 2022
上卦(じょうか)の震に過ぎ行くの象があり、下卦(かか)の艮(ごん)に山の象がある。そしてこの卦は大坎の卦であって、中の二陽は鳥の胴体で上下の四陰はその両翼とみる。これ飛鳥山を過ぎる象である。...