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水雷屯 すいらいちゅん

●龍水中に動くの象

りゅうすいちゅうにうごく

 此の卦は、震下坎上の卦であって上卦の坎は水の象、下卦の震は龍の象で尚震に動き進む象がある。依って龍水中に動くの象というのである。彖伝に「剛柔始めて交わり而(しか)して難生ず。険中に動く大いに亨(とお)る貞(ただ)し」とあるが、龍は昇天してこそ雲を起こし雨を呼ぶことも出来るが池中(ちちゅう)に在ってはその活動はなし得ない。今此の卦は、その龍が池中を出でて天上しようとする時であるが、その池中を出るということが大変な難みである。人は此の場合、慎重に行動せよというのである。

●草昧寧からずの意

そうまいやすからず

 彖伝に曰く、「天造草昧(てんぞうそうまい:天と地が生まれる前の渾沌としている様子)君を建つるに宜し而も寧からず」とあって、之は國土創造の際故、人民が野蠻(やばん:教養がなく、粗野なこと)蒙昧(もうまい:知識が不十分で道理にくらいこと)の状態にあって安寧でないことを意味したのである。草はハジメ、即ち草創(そうそう:物事の始まり)の義、昧はクラシと訓ず(但し暗いの字のクライとは異なる)、暗は夜の暗きをいい、昧は夜明け方のほのくらきをいう。下卦震に草の象、上卦坎に昧-不明の意がある。卦の序次(じょじ:物事の順序)からいえば、乾坤の二卦で天地が出来、屯の卦で国土が出来たのである。此の卦を人事にすれば、乾坤の父母あって、茲(ここ)に始めて生児の生まれようとする象である。即ち『生まれ出づる難み』即ち草昧寧からずである。