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水沢節 すいたくせつ

●狐泥中を渉るの象

きつねでいちゅうをわたる

上卦の坎に狐の象があり下卦の兌は湿潤の地であるところから泥田とみたのである。即ち狐が泥田を渉る象である。元来狐の尾は、その身体の割に長くて毛がふさふさしているから老狐(ろうぎつね)が河を渉るときはその尾を濡らさないように高く上げて注意するが、子狐はそれだけ思慮がないから深浅も流れの緩急も考えずにみだりに進むから、その尾を濡らして進むのに困難する。河川ですらそのようであるから、それが泥田の場合なら一層困難であることは勿論である。この卦名の節はホドと訓じて、物事、その節度中庸(ちゅうよう)を得るをいうので及ばざるのもまた行き過ぎも嫌うのである。そこでこの卦は、坎の水か兌の澤の上にあって、溢れず少なからず、程よく止め貯えるをいうのである。

●穽を作って自ら落ちるの意

せいをつくってみずからおちる

上卦の坎はなやみとし又陥るとする。下卦の兌は地の凹むところで且つ悦ぶ意がある。それで悦び進んで凹むところに陥って自らなやむ故、穽を作って自ら落ちるの意である。

 

 節は貞節又は節操などと熟字しホド、ヨシ、トドマルなどと訓ずるから、誰でも身の程を知って處卋すれば過失も少ないのに多くの人はそのホドヨクを守らずに狐泥中を渉る如き行動を敢えてして遂に坎険に陥るのであるが、それはいわゆる『身から出たサビ』自ら作った穽であるという訳である。