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水火既済 すいかきせい

●芙蓉霜を載せるの象

ふようしもをのする

既済はツクル、トグルの意で既に済むである。此の卦は、六爻陰陽(ろっこういんよう)、相交わり相應じ(あいおうじ)、又は相比しそしてそれぞれ皆正位(しょうい)を得ておる。即ち交も應も比も位もすべて皆既に済む故に既済と名付けたのである。陰陽三才天人地相合し、事物が充熟して、あたかも果実が熟しきっている枝を離れ地中に埋もれて再び生ぜんとする如き卦である。

この芙蓉とは木の芙蓉であって、一見、木槿(むくげ)に似ている。花は紅と白との二種あって秋開く大変美しい花であるが、何分秋の花だけに霜に傷みやすい。彖辞(たんじ)に『初めは吉にして終わりは乱れる』とあるところから此の語句をつなげたのである。下卦(かか)の離を芙蓉とし上卦(じょうか)の坎を霜とする。

※相合:物事を一緒にすること

 

※彖辞(たんじ):『易経』の各卦を説明した文章

●西施国を傾くの意

せいしくにをかたむく

これは呉越の戦の故事である。支那春秋戦国時代の頃、呉の国と越の国とが戦って越は惨敗した。その折、越王勾践(こうせん)は、参謀范蠡(はんれい)の謀(はかりごと)を用いて、西施という美人を呉王に献じた。呉王は、西施の愛に溺れ果てて、政務を顧みなかった為に、その後、越のために滅ぼされてしまった故事を引用した語句である。すべて物事は足るを知って七八分で止めるのが無事であるのに、十分を希むこともあたかも呉王が越に勝って領土を広げた上に、なお西施の如き美人を得て淫酒に耽ったために、遂に国を傾ける如きを招来したのと同一の結果になるという意である。