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離為火 りいか

●雉網中に罹るの象

きじもうちゅうにかかる

 これは重離の卦である。離に火の形がある。火気は無形のものであって、その火気が他の物に着いて始めて火となってその形を示すのである。それであるから此の離卦には麗(つ)くと離れるとの両(ふた)つの義があるのである。即ち火気は宇宙に存在するけれど、マッチなり金石なりで発火作用をなして又物と物との摩擦によって火の形を現すのであって、その火気を薪とかその他の燃料に移し燃やすのである。これ即ち物に麗(つ)いて始めて火の形とか火の力を知ることができる。然し、その燃料が盡(つ)きると火力は自ら消滅する。これ即ち離れるである。これで離卦に麗(つ)くと離れるの両義のある意味が会得されるであろう。然し占断上では多くの場合、離れるの意を探るのである。又離に雉の象があり、なお網の象がある。下卦の離を雉とし上卦の離を網に象どる。依って網の中に雉の麗(つ)いた象とみて冒頭の語句をかけたのである。

●秋葉風に飄るの意

しゅうようかぜにひるがえる

 此の語句は麗(つ)くと離れるとある両義の中の離れるの意を示したのであって、此の卦の互卦に沢風大過の卦がある(二、三、四、五爻による)が、その互卦の上卦の兌は正秋であり、下卦の巽には草木の象があり又渙(ち)るの意がある。そこで秋葉風に飄るの語句をかけてこの卦に離れるの意があるのを示したのである。