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風沢中孚 ふうたくちゅうふ

●鍋釜蓋を得るの象

なべかまふたをえる

上卦の巽は木であってフタであり、下卦の兌は金で凹である。鍋釜は金で凹である。それで木の蓋をした象とみたのである。鍋釜と蓋では材料は金と木と異なっても鍋釜の蓋のしっくり合うところが中孚の意である。中孚とは、マコトと訓じ誠信の意である。人事において、我は誠意をもって彼に対し、彼もまた誠意をもって我に対するならば、あたかも鍋釜の蓋を得る如く万事シックリゆくとの意である。

●鶴鳴き子和するの意

つるなきこわする

中孚の卦の九二(きゅうじ:二爻の陽のこと)の爻辞に『鳴鶴陰に在り其の子之に和す』とあり、それから引用して鶴鳴き子和すの語句をかけたのである。真意は子を思う親の愛の美しさを讃えたところにあるのであって、この孚の字はマコトと訓じそれにならい子にならう。親鳥が雛をそれをもって羽毛の下に抱えて入れる象である。この卦は倒兌(上卦)正兌(下卦)の両口が相対している。これ親鳥が口をもって雛の口に餌を与える意があるのである。

 

 

※周王朝(紀元前12世紀)の開祖である文王が「卦辞」を作り、息子の周公が「爻辞」を作ったとされている。「卦辞」「爻辞」「十翼」をまとめて「易経」という。