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風水渙 ふうすいかん

●順風駕帆の象

じゅんぷうがほ

巽を風とし坎を河海(かかい)の水とし、互体の震(二、三、四爻)を舟とする。全体から見て舟が水上に浮かび帆を張った象である。繋辞伝(けいじでん)に『木をくるめて舟となし木をけずりて楫(かじ)となし舟楫(しゅうしゅう)の利以て不通をわたし、遠きを致して以て天下を利す。盍(こう)し諸(これ)を渙に取る』とあるのは、この卦の全体の象を観ていったのである。

 

繋辞伝:易経の「十翼」の一つ。繋辞とは解釈の言葉を書き綴るという意味。

楫:水をかいて船をこぎ進める道具

舟楫:ふねとかじ、船を使って物を運ぶこと、水運

●萍水相逢うの意

へいすいあいあう

 萍とは浮草のことで、浮草は文字通り根なし草であるから水面に浮かび群生するものであるが、風が水上を吹いて波紋を生ずるときは散り散りになるが、風が息むと忽(たちま)ち相寄るものである。この渙の卦には散じて復集まる意がある。前述の澤地萃(たくちすい)の卦は降神の卦であり、この渙卦は昇神の卦であるが、その昇天し散じ給う神霊も復来たり集まり給うことはあたかも萍水が一度は散っても再び相逢う如きである。そこで占断においても凶事身を離れるを吉兆とも観、又一家離散して再び相逢うとも観るのである。