· 

山澤損 さんたくそん

●貴賎位を正すの象

きせんくらいをただす

 卦名の損はヘラスと訓じ、下卦を損して上卦を益するのである。上卦の艮は陽卦で山の象、下卦の兌陰卦で澤の象がある。又陽を尊び陰を賤(いや)しむのは易卦の通例である。山高く貴く澤低く賎し、その貴きものは上に在り、賎しきは下にある。これ貴賎位を正すである。

●奢りを損し孚を存するの意

おごりをへらしまことをそんする

 此の卦は元々、地天泰の卦の三爻と上爻とが位置を替えて損卦となったのである。泰卦のときは、下卦は乾で上卦は坤であった。その乾の上爻と坤の上爻とが往来して上卦に往った陽卦は艮の主爻となり下卦に来た陰爻は兌の主爻となった。又内卦を我とし外卦を彼とするから我は一陽を損して彼は一陽を益したのである。

 

 『真の陰徳』それを訓(おし)えたのが此の卦なのである。即ち、餘りあるを以て人を救わんとするならば救う時なしで富める人がその家宅衣服飲食などに奢ることなく、それを節して貧しきものに施し、己が有餘(うよ)の徳を以て無徳の人に益するのが即ち奢りを損(へら)して孚あるものなのである。