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風火家人 ふうかかじん

●窓より月を見るの象

まどよりつきをみる

 離下巽上の卦である。離に窓の象があり巽に月の象がある。よって窓より月を見る象である。彖辞に『家人女の貞に利し』といい、彖伝には『女位を内に正うす』とある。即ち巽の長女は上に在り、離の中女は下に在って各々その序を保って家を齊(ととの)える卦である。東洋古代の道徳では凡(およ)そ一家の妻女たるものは猥(みだ)りに外出せず内に在ってよく家を守り治むるものを以て良妻貞女とした。我が国で家内とか奥さんとか呼ぶのがそれである。であるから良家に於いては他人がその妻女を見る機会が少ないことになるので、それはあたかも窓から月を見る如きものであるといったのである。

●気有って形なしの意

きあってかたちなし

  上卦の巽は風で下卦の離は火であって風といい火といってもそれはいずれも無体のものである。風は空気の流動でそれが物に觸(ふ)れて始めて風その物を知ることができるのであり、火も亦或物について始めて火気を生じその勢を見ることができるのであるから、風も火も共に気はあってもその物の固定形はない。であるから此の卦は巽の風が離の火を動かして炎上する意があるので占断の場合に於いては家の乱れ不慮の変ある事を知るのである。