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山火賁 さんかひ

●門内美を競うの象

もんないびをきそう

 上卦の艮を門とし、下卦の離を美しとする。又賁とは飾る意である。門内美を競うとは、その家の中を飾って他家と美を競争することであるから、その妻女派手好きであるか又は主人が萃美奢佼を誇れど、内面は困難窮迫の意がある。それは此の卦の伏卦(ふっか:変爻した結果)は沢水困の卦であるからである。即ち此の卦の本意は質素倹約を説いているところにあるのである。

●明遠きに及ばざるの意

めいとおきにおよばざる

 上卦の艮は山とし、下卦の離は火とする。即ち山下に火がある象である。山上の火ならば遠方を照らすことができるが、山下の火では山麓のほんの一部を照らすのみであるから、これ明遠きに及ばざるである。又上卦離の太陽が下卦艮山に没すれば夜になる。夜離火を艮山の下にあげれば、その火の光は周辺の樹木に映って美しいけれど、その光明は唯近いところを照らすのみで遠方には及ばないから、これ亦明遠きに及ばずである。

    此の卦は前述のように、伏卦に沢水困を藏して、内実は窮迫しているのに外見を飾って世間の見栄体面を保たんとする意であるが、その様な行為は愚かしさ小和口者のなすことで大智の者のなさざるところであるから、即ち明遠きに及ばずである。(離の明智を艮で覆いたる象)