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地水師 ちすいし

●地勢淵に臨むの象

ちせいふちにのぞむ

 上卦の坤は地で下卦の坎を水とし陥険とする。これ地勢淵に臨むである。地勢とは地形と同意で土地の状態をいうことである。淵はフチと訓じ水の深く外へ流れないところをいう。ここにかけた語は上卦「坤」下卦「坎」の形象から謂ったのであるが、詩経にも「深淵に臨むが如く薄氷を履むが如し」の語があって、其の地形が深い淵に臨むでいる處は一歩を過てば転落の危険がある。それと同じく此の師卦は師はイクサと訓じ戦争の卦であって、古人も兵は危道(きどう)なりとか又兵は死地なりとかいう様に、戦争は所謂一國の運命を賭けた大事である故に一度失敗した時は國を挙げて焦土となすほどの覚悟を以てなさねばならぬのであって、それ故に雑卦伝には師は憂なりとある。即ち師の卦は心労多く憂患(ゆうかん:心配して心をいためること)多き卦である。

●寡を以て衆を伏すの意

かをもってしゅうをふくす

 此の卦は、第二爻の一陽爻が、他の五陰爻を引率して出兵する象であって、一陽爻は寡であり五陰爻は衆であるから、これ寡を以て衆を伏すである。又二爻は外臣の位であるから九二の一陽爻を将軍と見なし、他の五陰爻を兵卒と見たのである。