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坤為地 こんいち

●含弘斐有るの象

がんこうあやある

   彖伝に曰く『至れる哉坤元 萬物資って生ず 乃(すなわ)ち順って天に承(う)く 坤は厚くして物を載す 徳无疆(むきょう)に合う 含弘光大(がんこうこうだい)にして、品物咸(ことごと)く亨る』とあって、これは坤卦の徳を賛美した言葉である。含はフクムと訓じて包含の義、即ち万物を悉(ことごと)く包み容れるを云い、弘はヒロシと訓じて寛容の義で有せざるところなきを云い、斐はアヤ又はウツクシと訓ずる。即ち此の語の意は坤地の徳は、廣く厚くて万物をその上に載せているのみならず万物の生意をその地中に包み含むで万物を化生(かせい:新しいものが生まれ出ること)して地上に出し各々その光輝をあらわさしむるその有難い徳を讃えたのである。

●品物資って生ずるの意

ひんぶつよってしょうずる

品はシナ又モロモロと訓ず即ち衆(もろもろ)の物を云う。乾の場合は萬物と云い、坤の場合は品物と云うけれど、それは唯文字を変えたまでのことで意は同じである。然し茲(ここ)に注意すべき点は、前には乾は萬物資って始まると云い、ここでは坤は萬物資って生ずると云った点である。これは元来坤は地道であって天に順承するもの故に、天の気を承け順うことは出来るけれど、然し、自ら施し與(あた)えることは出来ない。即ち自然現象に於いて冬を去って乾天が春陽の気を施せば、坤地は之を受けて草木は新芽を出しそして花を開く。やがて乾天が夏気を施せば坤地は之を受けて草木は枝葉茂り諸々の禽獣は生殖する。秋も冬も亦乾天の気を坤地が受けて収藏(しゅうぞう:物をとり入れておさめておくこと)するのである。これを人事に就いて云うならば、乾道は男とし坤道は女とする。男女交われば、男は資元の気を施し、女は之を受けてそこで子孫が生成するのである。だから天地即ち乾坤の二元は洵(まこと)に萬物の母であって人類を始め草木禽獣虫魚に至る迄、凡(およ)そ宇宙間の生きとし生けるもの悉く此の乾坤の二元気に関係ないものはないのである。